◆約束 29



2022.12.11
春休みもあと10日を残し新学期がはじまる。
俺は遥への気持ちを思い出す為、春の長期休暇をすべて彼女と一緒に過ごしていたが、
一向に気持ちは向かなかった・・・それどころか会う度に違和感が増していく・・・
遥は俺を誘う。
恋人同士はそういうもんなんだろうけど・・・・
どんな仕草をされても、女を100%出されても俺の心が動くことはなかった・・・
ただその度に遥に対する違和感が少しずつ疑念に変わっていった。
さすがに5歳の時から一度も会ってねぇんだ、顔も体つきも女らしくなったし、
子供の頃の面影も全くねぇけど、・・・・遥の家族が遥だと認めている。
じゃ、俺のこのモヤモヤはなんなんだ?
やっぱり長く離れていたせいなのかぁ?
俺の勘が鈍っただけかぁ~?
でも、どうしても引っ掛かる・・・
そもそも遥がとても大切にしていた人形の名前は『チャットちゃん』じゃねぇ。
遥は『さしすせそ』が4歳になってもうまく言えなかったから『ちゃとちゃん』と発音していただけで、
あの人形の名前は『さとちゃん』だ。正式な名前は『さとる』で性別は男だ。
だいたい自分の大切な人形の性別を間違えるか?
あの人形だって俺がプレゼントしたものだ・・・確かにボロボロになってた人形は誕生日プレゼントに遥の父親が送ったものだが、『さとちゃん』は俺が土産で買ってきた物だぞ。
それにこないだのキスはファーストキスじゃねぇ・・・昔から何度もキスはしていたし・・・『結婚しよう』って約束したとき、遥が背伸びして“チュッ”ってかわいいキスをしたのが俺たちのファーストキスだぞ・・・そんな大切な記憶を忘れるか?
他にも引っかかることは山ほどある。
この違和感を解消しないと遥との先は無い。
俺はありえねぇ仮説を立てていた。
俺の勘が正しければ・・・・・それをどうしても確認したい。
***
俺は遥が邸にいない時を狙い白鳥邸を尋ねた。
司「ご多忙の中お時間をご頂戴しありがとうございます。」
父「いやいや、司君も立派な青年になって御父上もさぞお喜びになられているのではないかね。」
司「とんでもない、まだまだです。
先日は邸にお越しくださりありがとうございました。
あの時は突然の出来事で遥さんの完治に感動してしまい、ご挨拶もろくにできませんでしたので、
改めてご挨拶と12年前の謝罪に参りました。
あのときは遥さんに大怪我を負わせてしまい大変申し訳ありませんでした。
僕があの時遥さんの手を放さなければ、こんなに長い間リハビリに苦しむこともなかったのに
なんとお詫びをしていいのか・・・・」
俺は深く頭を下げる。
父「いやいや、君が悪いわけではないよ。そんなに責任を感じないでくれないか。
遥が自分で落とした人形を取ろうとして誤って崖から足を踏み外したそうだよ。
司君は遥の手を掴みよく頑張ってくれた。
遥もドイツでリハビリに励み今では普通に歩行ができるように回復した。
司君との再会をとても楽しみにリハビリを続けてきたんだ。
これからは婚約者として遥の事をよろしく頼むよ!」
司「はい、遥さんを幸せにします。」
立ち上がり一礼をしようとした瞬間、誤ってコーヒーをおじさんの服に溢してしまった。
司「すみません。」
父「あぁ、大丈夫、気にしないでくれたまえ。」
俺はサッとおじさんの服を拭いた。
父「新しいコーヒー頼む。」
おじさんが使用人にコーヒーを頼んだので、
司「大丈夫です。今日はこれで失礼します。」
父「まだ、来たばかりじゃないか?」
司「今日はご挨拶だけに参りましたので、また、遥さんと一緒にお伺い致します。」
一礼し俺は足早に白鳥邸を後にした。
俺は隙をみておじさんの髪の毛とたばこの吸い殻をこっそり持ち帰った。
俺の仮説はこうだ、本物の白鳥遥は牧野つくしだ。
何の確証もないが、俺の本能がそういっている。
牧野と遥とおじさんの髪をDNA親子鑑定に出した。
俺はもう何も信じない、俺は俺の勘だけを信じる。
数日後、鑑定結果がでた。
牧野とおじさんの親子確率99.999%
DNA鑑定で生物学上の父子関係を認められる。
おじさんと遥の父子確率0%
DNA鑑定で生物学上の父子関係を認められない。
「よっしゃー!」
思わずガッツポーズになる。
これではっきりした。俺の中にあったモヤモヤが晴れた。
やっぱり俺の違和感は間違ってなかった俺の野生の勘は正しい。
牧野つくしは白鳥遥だ。
そして俺が子供の頃結婚を約束した唯一の女。
でも大きな疑問が残るおじさんとおばさんが遥の事を自分の娘と認めているのは・・・なぜなんだ?
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