◆約束 28



2022.12.10
学校に退学届けを提出してから、あたしは正社員探しに本腰を入れ、
手当たり次第履歴書を送り続けた・・・
でも高校中退での仕事探しは非常に厳しかった。
僅か2社だけど、なんとか面接までこぎつけたけど・・・結局内定はもらえなかったし、
あぁ~これで全滅かぁ~。
当面はバイトで繋いで地道に就職活動続けるしかないなぁ~。
あたしは道明寺のことを考えないようにする為、目一杯バイトを入れ忙しく働いていた。
今回ほどバイト漬の人生に感謝したことはない。
どんなに辛くてもバイトの時間が来れば労働へと出掛け、忙しく働いているうちに気が紛れてくる。
・・・・そうやって徐々に道明寺のことを忘れていくんだろうなぁ。
みんな春休みかぁ~、今頃お花見してるのかなぁ~?
バイト帰りにそんなことを考えながら家路につくと・・・・
うん? ボロアパートが似合わない女性がうちの前に立っている・・・
ゲエっ・・・ うそでしょ・・・
流石にここで回れ右をするわけにもいかない・・・
遥「お久しぶりです。牧野さん。」
またしてもすぐに見つかった・・・
つ「白鳥さん、こんにちは。よくここが分かりましたね。」
渋々挨拶をすると、
遥「はい、司に聞いて」
つ「はぁぁ、、そうですか・・・で、今日はどうされたんですか?」
遥「少し牧野さんにお話がありまして、一緒にお茶でもいかがですか?」
正直この人たちとは関りたくない。
つ「ごめんなさい。 これからバイトへ行くので・・・」
首を傾げながら、
遥「今お帰りになられてのではないのですか?」
ですよねぇ~、流石にその嘘は通らないか・・・
つ「ハッハッハ・・・・そうでした。」
これ以上は逃られそうにない・・・。
私は嫌々ながら彼女の車に乗った。
車は白鳥邸へ向かった
道明寺邸に負けず劣らず立派な屋敷だ・・・・F3も然り、これらは家じゃない迎賓館だ。
使用人の方に出迎えられ彼女の部屋へいく。
ドアを開けた瞬間フローラルいい香りがした。
女の子らしい白を基調にした清潔感のある素敵なお部屋・・・あたしとは雲泥の差、月とスッポン・・・そりゃ、道明寺は白鳥さんを選ぶよねぇ~・・・はなっから選ばれる対象でも無かったけど・・・あははっ、、、
遥「どうぞ、お掛けになって。」
つ「失礼します」
あたしがソファーに腰を下ろすと、
使用人の方がアフタヌーン・ティーを用意してくれた。
美味しそぉ~こんな時でもあたしのお腹は空くのね・・・
遥「今日、お越しいただいたのは司と私の関係をあなたにお話しておこうと思いまして」
つ「はあ・・・」
今更?・・・ あたしが二人の関係を聞いてどうするの?
あぁ、・・・もう速攻帰りたい。
遥「私と司の出会いは私が生まれた時からはじまったのよ。
道明寺家と白鳥は先代から仲が良く公私ともに交流があったの。
幼少期はいつも一緒に遊んでいたわ。
私たちは幼いながらにお互いの運命を感じ合い『将来は結婚しよう』って約束してたの。
素敵でしょう、運命の赤い糸よ、ウフフッ」
嬉しそうに笑う遥・・・・ゲッソリするあたし。
遥「でも、私が4歳の時、大けがをして歩けなくなったの。両親は嘆き悲しんだわ。
それでお父様が八方手を尽くし探していらしたドイツの専門医の下で治療をすることになり、
私たちは家族でドイツへ移住したの。
司に再開することだけを心の糧に厳しいリハビリに耐えてきたわ・・・
司は私がケガをしたのは自分のせいだと思い込んでいるの・・・だから絶対歩けるようになって彼を安心させたい一心で、この12年間司に一度も会わずに頑張ってきたのに・・・・
それなのに12年ぶりに日本へ帰国したらあなたが司の隣にいた・・・
あなたを見た時心が悲鳴を上げたわ。
私、怖いの・・・司をあなたに奪われるような気がして、不安で不安で気が狂いそうなの・・・
だから無理を承知でお願いするわ。司の前から消えてくださらない。」
白鳥さんがあたしの前に分厚い封筒を差し出した。
つ「・・・これは?」
遥「このお金を使って他の学校へ転校してくださらない?
そしてもう二度と私たちの前には姿を見せないでほしいの。」
険しい表情であたしを見つめる。
つ「白鳥さんは何か誤解をしていらっしゃいますが、あたしと道明寺さんは何の関係もありません。
強いて言えば、あたしがたまたま道明寺さんに助けてもらっただけです。
それ以上でもそれ以下でもありません。それにあたしはもうすでに英徳学園を辞めています。」
遥「それは本当なの?」
つ「はい、修了式の日に退学届けを提出しました。だからこのお金はいりません。」
遥の顔が安堵の微笑みに変わる。
遥「そう、そうなのそれはよかった。
私、日本に帰って来て、急に環境が変わったでしょ、
だから少しナーバスになっていたのかもしれないわね。」
あたしの退学を知った途端、怒涛のお惚気話がはじまった・・・
遥「司はねぇ、私の不安を取り除くようにいつも耳元で愛を囁いでくれるの。
何度も何度も甘い声で『愛してる』って///
私ね、ファーストキスも初体験の相手もすべて司なの、もちろん司も同じよ。
お互いしか知らない純愛同士。
司ったら凄いのよ///・・・あの大きな体でしょう・・・あちらもほうも・・・///
司に女の喜びをたっぷり教えてもらったわ。
彼にはずっと我慢させてしまったから・・・これからは毎晩、私が、、ウフフっ///」
この拷問のような時間はなんなの?
ベッドの上の二人の交わりが頭に浮かんでくる・・・その想像を搔き消そうとブンブン頭を振り冷静を保つ。
つ「白鳥さんそろそろ失礼してよろしいですか?これからあたしがお二人に関わることは一切ありません。
道明寺さんと幸せになってください。」
白鳥さんの目を真っ直ぐ見据え話す。
遥「牧野さんの口から司との関係をきっぱり否定してくださって安心したわ。私はあなたの言葉を信じます。
でも、あなたが今後司に近づくようなことがあったら、私は本当にあなたを消しますよ。
帰りは送らせます。車に乗って帰ってちょうだい。」
こわっ・・・目が笑ってないんですけど・・・
はぁーー、やっと解放された・・・消すってどういう意味だろ?
島流しの刑? 打ち首獄門のほう?
絶対近づかないから大丈夫だけど・・・そもそも近づいて来るのは白鳥さんだし、
そっちこそあたしの前に二度と現れないでほしいわぁ。
あぁ~~凄く疲れた・・・・結局これは何だったの?
二人のラブラブ話を聞かされただけじゃない・・・折角バイトに明け暮れて道明寺の事考えないようにしてたのに、失恋の傷口にべったり塩を塗り付けられた・・・あぁ、、痛い、、痛い‥‥心が痛い・・・このダメージはかなり深いわ・・・明日のバイトまで引き摺りそうだ・・・あたしは傷心したまま家に帰っていった。
*
司は私といても、どこか心ここに在らずといった感じで、いつも他ごとを考えている。
どれだけ誘っても、いつも素っ気ない態度で私を交わす・・・司の婚約者はこの私。
司は誰にも渡さない・・・司は私だけのもの。
あの女にはしっかり釘を刺しておいたけれど、あの女狐、何を考えてるか分からないし、
『牧野つくし』についてしっかり調べる必要があるわね。
*******************************************************************
スポンサーサイト
|
comments(4)
|
- |
page top
|