◆約束 27



2022.12.09
俺は遥への気持ちを思い出すため、常に遥と行動を共にした。
出会った場所、よく遊んだ所、お互いの邸、海や山などいろんな思い出の場所へも一緒に出掛けた。
遥と昔話をしたり思い出を語り合ったりしながら、離れていた時間を埋めていく。
遥「司覚えてる?このお庭でよくおママごとしたよね。
司がパパで私がママ、チャットちゃんが子供役。
私、あのお人形大好きだったんだ、パパのプレゼントだし。」
笑顔の遥。
司「覚えてるよ。おまえあの人形とても大切にしてたもんな。」
遥「私1人っ子でしょ、だから妹代わりだったのかな?」
司「・・・そうか」
俺たちが遊んでいた場所も思い出話も大体の筋は合っている・・・
そもそも何年も昔の話だし、当時遥は4歳、所々の記憶が間違っていてもおかしいことじゃねぇ、
小さい頃の記憶が曖昧なのはみんな同じだろ。
でも、間違いとかそういう事じゃなくて・・何か違う・・・何が違うのか?
・・・・わからねぇが、この悶々とする感情は何だろう?
二人が離れ離れに育った環境の所為か?
会えなかった空白の時間の所為か?
それとも俺の心変わりの所為なのか?
12年という長い年月が経っているのは確かだ。
はっきり言って顔もぼんやりとしか覚えてねぇし、声もおぼろげだ・・・
人間の記憶なんてその程度のもんだ。
それなのに所々鮮明に覚えている記憶もあるんだから不思議だよな。
でも・・・今は、その鮮明な記憶でさえ、
時間の経過と共い付け足された思い込みなのかもしれねぇって思えてきたよ・・・
記憶なんて不確かなもの。そう考えると自分自身が確信しているこの記憶さえ、
俺が脚色した想像の産物なのかもしれない・・・
ぐちゃぐちゃに乱れてしまった俺の思考回路・・・
だんだん本当の記憶がどれなのかさえ、分からなくなってくる。
ただ1つだけ、今の俺の中にも確かなものがある。
それは遥と話していても感情が動かないということ。
思い出話をしていてもそれと共に懐かしい気持ち、
そのときの温かな気持ちが何も湧いてこない。
まるで赤の他人と話しているようだ・・・俺たちの思い出には何が足りないんだろう?
そんなことを考えていると、
遥「かさ・・つかさ・・つかさ」
我に返る。
司「なんだ?」
遥「さっきから何度も呼んでいるんだけど・・・」
司「次に行く場所を考えてた。」
遥「・・・司は私の事愛してるよね。」
司「当たり前だろ。」
遥「じゃ、キスして」
遥が目を閉じ顔を近づけてきた。
俺は遥の唇にキスをした。
遥「私のファーストキスだよ///司に会うまで、ずっと大切に取っておいたの///」
遥が頬を赤らめ恥ずかしそうに俺の目を見つめる。
うぅっ?
遥とキスをしても唇が何も感じねぇ。
牧野と初めて唇を合わせた時は柔らかい唇が触れた瞬間、心が奪われたのに・・・
遥「司っ・・私///・・・司に私の大切なものを貰ってほしい・・・///」
司「・・・・・・・」
遥「女の子からこんなこと言うのは、はしたないって思われるかもしれないけど、
・・・司に会うためにリハビリ頑張ってきたの、司に愛されたくて///
私、昔も今も司だけが好き。司と1つになりたい///」
俺は当惑した・・・
そんな気になれねぇのが正直な気持ちだ。
遥の事は時間を掛けて愛するつもりだが・・・今はそんな感情は全くない。
司「あぁ、俺も遥のこと好きだぜ。
でもまだ、歩けるようになったばかりだろ。おまえにそんな無理はさせられない。
これから先、いくらでも一緒に居られるだろ。今はおまえとの時間を埋めていきたい。」
遥「司は相変わらず遥だけに優しいのね。」
遥はぽつりとつぶやいた。
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